「日常運動」と「スポーツ運動」
人間が覚えていく動きの中で、歩いたり、走ったりという日常動作を覚えるのに悩んだ人はほとんどいないだろう。なぜなら日常動作は知らない間に、いつのまにかできてしまっているからである。そして、日常動作は普通の健常者であれば例外なくできる。以下、日常生活の中で日常的に行われる運動のことを、ここでは日常運動と呼ぶことにする。
このように、日常運動がいつのまにかできてしまうのは、それがまさに日常生活の中で繰り返し反復されるからである。子どもは覚えるのが早いとよく言うが、それも同じ理由から説明できる。子どもは遊ぶ時間が毎日ある。すなわち、興味を持ったら毎日できるし、毎日やろうとする。大人になると物事になかなか夢中になれないし、なれたとしても仕事や家庭サービスで自分が自由に使える時間はかなり限られてくる。
一方、スポーツで要求される技となるとそうはいかない。なぜなら、スポーツで要求される技は日常動作のみでは解決がつかないことが多いからである。歩いたり、走ったり、投げたり、跳んだりすることができても、自転車に乗ることや泳ぐことはできない。泳いだり、自転車に乗るためには、新たに別の技能をそれこそ一から身に付けていく必要がある。そして、その技能は日常動作にはないため、日常生活以外に時間を作って練習する必要が出てくる。学生はともかく社会人がそのような時間を毎日つくることは非常に難しいだろう。新しいスポーツを覚えるのにかなりの月日がかかるのはそのためである。以下、スポーツを行う中で要求される運動のことを、ここではスポーツ運動と呼ぶことにする。
スポーツ運動が日常運動と異なる点は他にもある。日常運動は日常がそのまま練習の場になるのに対して(その結果、反復時間は非常に多くなる)、スポーツ運動は日常以外に特別の時間を作って、日常とは異なる特別の場所に行き、そして日常では行う機会のない、そして別にやらなくてもいい特殊な運動をあえて自分から積極的に行う必要がある。
ところで、プロのスポーツ選手と一般のスポーツ愛好家や一般人と、決定的に異なる点は何だろうか?それはプロのスポーツ選手はスポーツ運動をほぼ日常運動化している点ではないだろうか。プロのスポーツ選手はスポーツをするのが仕事である。少しでも技を磨いて強い選手になるのが仕事である。スポーツに費やす時間はプロのスポーツ選手と一般のスポーツ愛好家、ましてや一般人とは全く異なるはずである。そういう意味でプロのスポーツ選手が上手なのは当たり前である。もし、仮に一般のスポーツ愛好家や一般人もプロのスポーツ選手並に練習をすれば、少なくともプロのスポーツ選手に近づくことはできるに違いない。中にはプロのスポーツ選手になれる人も出てくるだろう。